▼ ▲ ▼
若利くんと同棲してから作ったルールには、お互いの不満を言い合うというものがある。時折私の胸をぐさりと刺すようなことを言われ、若利くんもまた目を閉じて深く考えることがある。今回はそれほど大したものではなく、どちらかといえば好きゆえの不満だった。
「折角同棲してるのに、朝一人で目覚めるのは寂しい」
私が起きた時、いつも若利くんはいない。夜寝る時は一緒にいたのに、まるで置いて行かれたかのような感覚になる。
「俺は嫌がらせをしているわけではない。朝ランニングに行っているだけだ」
「わかってるけど……」
話し合った結果、私が若利くんに合わせて早起きすることになった。早起きは苦手でないし、若利くんのためならば余計だ。
「これで若利くんと一緒に起きられるね」
眠る前、ベッドに入りながら若利くんを見る。若利くんに合わせて早寝をしているから、普段の私は眠りすぎなくらいなのだ。早起きして空いた時間は朝食を作ることにする。先ほど決めたことを思い出したように若利くんが難しい表情をした。
「早起きした分名前が朝食を作るなら家事負担が平等ではなくなるのではないか」
今、私達の家事負担は同じくらいだ。若利くんはそのバランスが崩れるのを恐れているのだろう。小さな不満でも積もれば一大事になってしまうことを私達は同棲生活でよく知っている。
「そこはほら、私ばっかりいい想いするわけにはいかないし」
私がきっかけで若利くんと同じ時間に目覚めることになったのだ。若利くんと一緒に目覚められた上にご飯も作ってもらえる、では恵まれすぎている。
「俺もいい思いはしている」
若利くんは私にそっと手を伸ばした。
「眠っている名前を見て出かけるのもいいが、やはり起きてくれていた方が嬉しい」
一緒に目覚めたいと思っていたのは私だけではなかったのだ。その日、私達は手を繋いで眠った。起きた時に手は離されていたが、若利くんは手を繋ぎ直した。
「おはよう」
愛おしそうな表情を浮かべて。
/kougk/novel/6/?index=1