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 宮侑に熱愛報道が出た。そのニュースを見るなり私は侑にメッセージを飛ばした。本当は家に駆け込んでやりたいところなのだが、顔を撮られた手前直接会うのは憚られる。今週発売の週刊誌には、私と侑が都内のラブホテルから出てくるところが大々的に掲載されていた。

 もし私が侑と正式に交際していたならば、結婚への布石とも言える出来事に喜んでいたかもしれない。だが私は侑のセフレなのだ。侑のことを好きでもないし、将来の約束などもしていない。侑もそのはずだった。しかし、侑の所属チームはこの報道を良しとしなかった。ホテルから出てくるところを撮られた以上、肉体関係であることは明白だ。ただの友達だと言い訳することは難しい。セックスフレンドなどチームのイメージに関わるので言えるはずがない。悪いことに、侑は今まで熱愛報道もなく公式に結婚や交際をしている相手もいなかった。上層部はイメージを保つためだけに、私を侑の正式な彼女であると発表させたのだ。声明を出したのは侑だが、侑があんなに真面目な文章を考えられるわけない。

「別にええやん」

 呑気なメッセージが返ってきて、私は思わず侑に電話をかけた。

「ええわけないやろ!」
「何で? 喜べや。イケメンアスリートの彼女やぞ」

「セフレはよくても侑の彼女にだけはなりたくないわ」
 大体何故侑はこんなにも楽観しているのだろう。確かに侑のファンならば侑の女遊びの一部であると見抜いているかもしれないが、世間一般にとっては私が彼女になってしまったのだ。侑とはセフレにここまで甘い男だっただろうか。

「……この間侑にたかってた女いるやん? あの女と報道されとったら彼女にしてた?」
「それは死んでも嫌や」
「何やねんそれ!」

 試しに侑に媚を売っていた女の名前を出してみると、侑は即座に否定する。誰でもいいというわけではないようだ。

「私のこと結構好きなんやな」
「そら正妻やからな」
「妻やなくて彼女や!」

 私が怒鳴るように言うと、侑は「もう認めとるやん」と笑った。

「とにかく認めんからな。撮られるかもしれんから今後セックスもせん」
「そしたら電話とラインで愛を育むだけの清純なお付き合いになってまうけどええの?」
「毎日でもセックスしたるわ!」

 こうなればもう自棄だ。侑は楽しそうに笑って「なら頼むわ」と言った。結局私達はセックスフレンドなのだ。そのうち侑に浮気疑惑記事が出るだろうから、その時に堂々と私達の仲を明かしてやろう。私は「じゃあな!」と叫んでから通話を切った。