▼ ▲ ▼
佐久早の母の実家にあたる家の仏間で、女が一人佇んでいる。蚊に刺されることなど構わなさそうに肌を露出して、佐久早を見ている。その視線に、捕えられたと錯覚する。佐久早の喉がごくりと鳴った。線香が尽きるまでの間、火の様子を見ているように言われたのは佐久早だ。では何故、親戚にあたる彼女は佐久早と同じ部屋にいるのか。到底、彼女が火を見ているとは思えない。彼女が見ているのは佐久早のもっと内側の、気の揺らぎだ。
「見えてます」
平静を装うにはそうするしかなくて、佐久早は指摘した。彼女が着ているワンピースは胸の辺りがはだけていた。もしかすると、それが正しい着方なのかもしれなかった。少なくとも今この状況、佐久早を誘惑するということにおいては。
「見せてるの」
何も読み取らせない表情で彼女は呟く。
「……どうして?」
佐久早はきっと、頭脳でも経験でも彼女に劣っている。言葉遊びのようなやりとりで、佐久早の全てが露呈しかねない。たとえば今すぐにでも彼女を組み敷きたいことだとか、彼女は何番目の叔父の娘であったかと考えていることとか。
つう、と首筋を汗が伝った。彼女は何事もないような表情をしていた。彼女の周りだけ冷房が入っているのではないかと錯覚するくらいだ。
「聖臣くんの理性を消すためだよ」
やはり、彼女は佐久早をそういうことに誘おうとしている。理性を消して何をするのかと問うほど佐久早は純朴ではない。今更清純を装ったところで、佐久早の溢れ出る肉欲は彼女に伝わってしまっていることだろう。
「俺は、したくないです」
佐久早は下を見る。これ以上彼女に向き合えなかったから。彼女の布の隙間から見る白い乳房に、耐えられなかったから。
「どうして?」
まるで教師が生徒を優しくただすように、彼女の声がする。佐久早は畳の目を見ながら、必死に頭を回した。
「そういうのは付き合ってから、」
言い終わる前に、唇をすくわれる。奪われたと言うのが相応しいキスだった。いつの間にか彼女の顔が佐久早の下に潜りこんでいて、顔を持ち上げるように唇を当てられていたのだ。佐久早は、初めてキスをした中学生のように体を引く。
「じゃあキスは?」
佐久早の唇に息がかかる距離で、彼女は囁いた。彼女の吐息は熱く湿っていた。挿入した時の女性器の体温を感じさせるような湿度だった。
「もうしちゃったけど、キスも付き合ってからがよかった?」
「いや――」
佐久早は言いかける。自分でも何を言おうとしているのかよくわかっていない。無理やりされたなら、佐久早は何もかも許してしまうのか。キスをしたなら、全てしてしまっていいのか。疑念が渦巻いているところに、突如として爆竹が投げられる。
「聖臣くんがしてくれないなら、元也くんとしようかな」
その言葉を聞いた瞬間に、佐久早は彼女を押し倒していた。佐久早の目は血走っていただろう。彼女が、歳に見合った大人の男性と関係を持つと言うのならそれは諦める。でも、佐久早のような高校生を相手にするなら、その相手は佐久早でなくてはならないのだ。
「そういう顔もできるんだ」
彼女は怪しげに目を細めた。それが佐久早を煽るためにしているのなら大成功だ。佐久早は乱暴に彼女のワンピースを剥ぎ取った。ワンピースはいとも簡単に剥がれた。まるで脱がされるために存在しているみたいだった。
薄暗闇に白く浮く、彼女の肌にかぶりつく。明日になって、跡の残った肌を見て祖母達に何か言われたらどうするのかといったことは考えない。誘ったのは彼女なのだから、それは彼女が考えればいいことだ。第一、彼女は親戚で集まっても自室にこもっていて、親戚の相手などろくにしなかったではないか。だからこそ神秘性が増し、佐久早の今の興奮に繋がっているとも言えるのだが。
佐久早は、自分が真に解放されていることを感じた。同級生の恋人であったなら、これほど乱暴に触ることはできないだろう。彼女は、正式にお付き合いをしているわけではないし、勿論同い年でもない。経験値でマウントをとって佐久早をからかうような目つきをしているからこうなるのだ。もっと、めちゃくちゃにしたくなるのだ。
手のひらいっぱいに乳房を掴んだ。手を握れば、それに合わせて乳房も動いた。多分彼女は痛いだろう。でも止めがきかなかった。セックスの評価基準を女性を安心させることに見出すならば、佐久早落ちこぼれだ。好き勝手、やりたい放題しているのだから。しかし彼女ならば受け止めてくれるだろうという信頼があった。年上だからなのか。年上ぶっているからなのか。この余裕をなくしたい。「佐久早」自身を見させたい、という熱が、佐久早を襲う。
指を丸めて、勃起した乳首を弾く。彼女が小さく体を揺らす。ショーツの中に手を潜らせて、彼女の穴を探す。顔を彼女の腹の辺りに置いて、暗闇の中で彼女の乳首を探す。あった。
指を膣に入れると同時に、彼女の乳首を舐めた。舌を出したり入れたりしながら、彼女の膣の中を探った。彼女は濡れていた。女性の生理的反応だろうが何だろうが、佐久早がそうさせているということが嬉しかった。
「っ……」
彼女の声は、呼吸の延長のようだ。佐久早は素早くズボンとパンツを脱ぎ、暗闇の中で膣を探す。ぬめりに動きをとられながら、奥へと進んだ。ぬるい足湯に浸かっているかのような温かさに包まれる。それだけで満足しそうになった時、彼女と目が合った。佐久早を煽るような、その目つきに。
佐久早は彼女の上に馬乗りになり、初めてセックスを覚えた獣のように一心不乱に腰を振った。それまで控えめな声しか上げていなかった彼女も、大胆に嬌声を上げるようになった。他の人に聞かれたら、という心配は不要だった。今頃聞き分けのいい佐久早は、祖母の指示通り線香を瞠っているはずだから。
「っあ……!」
炎が、揺らぐ。早く終えてしまいたい持久力レースの中にいるような、それでいていつまでも中にいたいような。佐久早は助けを求める目で彼女を見た。ここまで骨抜きにした責任をとってくれと。彼女は不敵に微笑んだ。その瞬間、彼女の膣がぎゅっと締まった。
「あ……」
頭が白む。達成感と背徳感、それから少しの情けなさ。彼女は果たしてイっていただろうか。男根と共に力を失って、佐久早は畳にへたり込む。
「避妊……」
「ピル飲んでるから」
彼女はそれだけ言うと、佐久早の男根を掴んだ。要するに、彼女はまだ果てていないということだ。
/kougk/novel/6/?index=1