▼ ▲ ▼

 佐久早の部屋を訪れた時、私の目に一番に入ったのはベッドの下のスペースでも髪の毛一つ落ちていない床でもなかった。出窓の所に、トロフィーや盾が置かれている。すべて佐久早が、バレーで獲得したものだろう。よく見てみれば、MVPや総合優勝、全国優勝まである。その盾の横に、私が佐久早の誕生日にプレゼントしたマグカップが置かれていた。

「私のプレゼント置くのここで合ってる……?」
「合ってる」
「だって全国優勝した盾の隣に私の買ったマグカップじゃおかしいよ」

 佐久早が気に入ると思って買ったマグカップだが、全国優勝の盾の隣ではなんとも肩身が狭そうだ。私とてこのような使われ方をされるとは想定していない。

「おかしくない、お前も日本一だから」
「日本一?」

 私がいつ日本一を獲ったのだろう。私はといえば、学業もスポーツも平凡な特技もない女だ。佐久早は恥ずかしそうに視線を下げる。

「日本で一番好きってこと」

 この場の空気が変わった気がした。私達は間違いなく恋人同士としてここにいる。異性の部屋に上がる時点でそのようなものだけど、私はまだ実感がなかった。佐久早が私を日本で一番好きだと言うまで、まるで教室で話しているかのような心地でいたのだ。

「いつか世界一のトロフィーも隣に並べたい」

 そうしたら私は世界一に並ぶ女だ。その時佐久早は私を世界で一番好きだと言うのだろう。佐久早なら本当に世界一になってしまう気がする。

「が、頑張って……」

 私の言い方は他人事のようだったのだろう。

「お前も支えろ」

 佐久早は視線を私に寄越す。佐久早が世界一になるまで、私は隣にいることを許されているのだ。多分世界一になった後もずっと。遠回しのプロポーズのような気がして私は唇を固く結んだ。佐久早はきっと、夢を叶えてしまう。何と言ったって有言実行な男なのだから、私も覚悟しておくべきだ。