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 先程凛に触れた時、心の声のようなものが聞こえた。何かの間違いだろうか。もう一度凛に触れてみる。恐る恐る凛に手を伸ばす私は相当挙動不審だっただろうに、凛は私が自分の腕に触れることを当然のように受け入れた。

「こいつ今日もやたらと可愛いな」

 間違いではない。私は触れると凛の心の声が聞こえるようになってしまったのだ。

 心の声の内容も相当な衝撃だが、凛の考えていることを一方的に知ってしまえるようになったことの衝撃の方が大きい。とりあえず、このことを凛に伝えないのではフェアではないだろう。

「な、なんかさっきから凛に触れると凛の心の声が聞こえてくるみたいなんだよね……」

 何を言っているのかと思われると思っていた。それか、私をばい菌のように扱って避けると思っていた。しかし現実の凛はまるで動じず、むしろ私に手を伸ばす。

「そうか」
「何で触ってくるの!?」

 触れたら私に心が読まれてしまうのだ。触れない方がいいに決まっている。むしろ私の方が凛を避けていたが、凛はさらに距離を詰める。

「心読まれてもいいから俺はお前に触れてたいんだよ。それにどうせ俺の考えてることなんてわかんだろ。触れたいとまで言ってんだから」

 心を読まれるリスクを背負っても私に触れていたい。それに加えて、先程のあの心の声である。こう思うのは自意識過剰ではないだろう。

「私のこと、好きってこと……?」
「確かめてみるか」

 凛が私に触れた。凛は心の中で私を好きだと唱えていたのかもしれないけれど、その声は私の意識の中に入らなかった。私を好いている人に触れられることに頭がいっぱいで、そんな余裕はなかったのだ。もしかしたら私も、凛を好きなのかもしれない。