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 木兎から告白された。木兎のことは好きでもないけれど嫌いでもない。恋愛対象としてはありの部類だ。私は告白をオーケーした。私に交際を申し込んだ木兎は、舞い上がって喜ぶものと思っていた。

「やばい……」

 予想に反して、木兎は気まずそうにしている。一体私と付き合うことの何がいけないのだろうか。木兎のことなど好きではなかったはずなのに、私のことが好きなんでしょう? と苛立たしく確認したくなる。

「告白、合宿の時に呼び出してするんだった」

 どうやら木兎は、仲間内で私が好きだという話をしていて、告白の日時を決めていたらしい。高校生にもなって一人で告白できないのかと思うが、そこは木兎だからと納得することにする。

「何で今しちゃったの」
「好きだー! って気持ちを抑えきれなくて」

 それほどに私を好きだったと言っているような答えに、私は少し照れる。木兎は素直でいい奴だ。だから多分、告白も承諾したのだろう。

「合宿の時告白するから、初めてみたいな感じで告白聞いてくんない!」

 随分無茶を言うものだ。仕方なしに頷けば、木兎は急いで去って行った。まるでこの場面を誰かに見られたらいけないというように。面倒だと思いつつ、従ってあげる私は木兎に相当入れ込んでいるのだろう。

「好きです! 付き合ってください!」

 バレー部が校舎で合宿をしている日、予定通りと言うべきか私は呼び出された。後ろにはバレー部の面々が控えている。木兎はそれほどバレー部におんぶにだっこの状態らしい。

 私がしみじみとしていると、木兎が小声で語りかけてくる。

「ほら、返事! ていうかもっと驚いて!」

 驚いて、と言われても、木兎が私を好きであることは前からわかりきっていた。ここで驚いたような反応をすることこそがわざとらしいのではないだろうか。

「あ、うん。いいよ」

 適当に承諾すると、後ろで見ていたバレー部の面々がどよめいた。

「木兎が告白成功した……?」
「ていうかやけにあっさりしすぎじゃないですか。木兎さんも成功したらもっと喜ぶと思うんですけど」

 その声は木兎の耳にも入ったらしい。確かに、木兎のような部類の人間は告白が成功したら両手を挙げて喜びそうだ。

 木兎は私に近寄る。何をするのかと身構えるも、木兎の力と瞬発力には敵わない。

「大好きだー!」

 木兎はまるで祭りのように私を抱き上げた。半分はバレー部に見せるためだろうけれど、半分は本当に喜んでいるのだろう。

「やりすぎ!」

 私は半ば嬉しく思いつつも小声で囁いた。バレー部を見ると、ようやく納得したようである。どうやら私は、今後このテンションの男と付き合っていかなければいけないらしい。それも悪くないかな、と思うくらいには、もう木兎のことが好きなのだろう。