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 恋人が死んだ。殺された、と言った方が正しいのかもしれない。不審な死に際には、明らかに非合法組織の影があった。そして、その犯人は南雲さんだと知ってしまった。多分だが、南雲さんはわざと私が犯人を知るように仕向けたのだと思う。南雲さんほどの人なら、隠し通すこともできたはずだ。いつものようにどこからともなく現れた南雲さんは、私の問いに頷いた。南雲さんが私の彼氏を殺したのですか? と。

「そうだよ。僕が君を好きだから、殺さないであげる代わりに付き合ってって言うと思った?」

 薄々感じていて、でもどちらも言葉にしていなかったことだった。南雲さんは私が好きだ。一体いつから、どうしてなのかはわからないけれど、多忙だろうに私の所に来てとりとめのない話をしていく南雲さんからは好意を感じていた。私の彼氏が南雲さんの所属する組織の標的になった時、南雲さんと付き合う代わりに彼氏を見逃してもらう選択もあったのだ。そうなったとして、私はその選択をしていただろうか。今となってはわからない。ただ、南雲さんはその選択を私に突きつけなかった。もっと重苦しい感情を私に向けた。

「僕は君が意識してくれるなら向けられる感情は何でもいいんだ。恨みでも、憎しみでも」

 南雲さんは彼氏を殺したことで私に恨まれることを望んでいたのだ。恨みでもいいくらい、私に強い感情を向けてほしかった。

 私は今までの日々を思い出していた。南雲さんのことは、ただの喋り友達としか思っていなかった。南雲さんが軽薄なのをいいことに、南雲さんの好意を無視していたのだ。南雲さんにそれほど強く想われていたことに今更気付く。申し訳なくなると共に、もう引き返せない所まで来てしまったと悟る。私はこれから、死ぬまで南雲さんに執着されるのだ。