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「反転術式ってどんなの?」

 硝子が煙草を吸っている時に、五条が興味ありげに尋ねてきた。五条に反転術式について聞かれるのは初めてではない。でも今度は、実戦のためではなく興味本位で聞かれているような気がした。戦闘以外で反転術式をどう扱うかの予想はつかないけれど、五条のことだからろくなことに使わないのだろう。

「一度壊して、新しく作り直すとかできんの?」

 硝子が黙っていると、五条は質問を足した。反転術式ってどんなの、と聞かれるよりはやや答えやすい。

「まあ、そんな感じ」

 適当に硝子が返すと、五条は「ふーん」と言ってどこかへ消えてしまった。

 名前が硝子の元を訪ねてきたのはその数時間後のことである。唇を押さえ、顔を赤らめる名前は明らかに何かあったようだった。誰がそうさせたのかについて、硝子は次の言葉で簡単に想像がつく。

「唇だけを残して怪我を治してもらうってできるかな……?」
「五条になんかされたな」

 名前から話を聞くとこうだった。名前は任務で怪我をした。硝子の元へ怪我を治してもらいに行こうとする名前を呼び止め、五条は名前にキスをした。

「どうせ治してもらうんだし、犬に噛まれたと思えよ」

 それだけ言って、去ってしまったという。反転術式が体の再構築なのかと尋ねたのは、キスをしても反転術式で治せばなかったことになるからいいだろうとの考えだったのだ。相変わらず自分勝手な態度に呆れるが、名前本人は五条からのキスの痕跡を消したくはないようだ。相思相愛ならば、硝子を挟まずに勝手にやってくれ。そう思ったが、名前に言うことではないだろう。五条に早く告白しろと急かさなければいけない。その前に、名前の治療だろうか。

「まったく、面倒なことさせるよ」

 硝子は名前の体に手を当てる。唇だけ残してコントロールするのは大変だから、いっそ全身を反転術式で治してしまおうか。名前がキスの痕跡を残したく思っているなら、五条が告白して正攻法でもう一度キスをすればいいのだ。想いが通じ合えば、キスごときいくらでもできる。五条がキスに怯むチキンでなければだが。反転術式がなければキスもできない奴だったことを思い出し、硝子は笑った。