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 栄養に気を遣っている牛島とて、クラスメイトと放課後ファストフード店に寄ることはある。そういう時、大抵ジャンクフードではなくソフトドリンクだけを頼む。牛島のことを理解している同行者もまたソフトドリンクだけを頼んだ。重要なのは、何を食べるかではなく誰といるかなのだ。

 商品を受け取って席に着いたところで、牛島は自分のドリンクのストローが紙でできていることに気付いた。草のような味がする上、湿気てしまうそれを牛島は好きでない。ちらりと視線をやれば、同行者の苗字はプラスチックのストローだった。

「ストローを交換しないか」

 飲み物によってストローの種類が違うのだろうか。牛島はプラスチックのストローがいいだけだが、苗字は意識しているようだ。恐らく、苗字が既に一口飲んでしまったからだろう。

「なんで……」
「俺は苗字のストローがいい」

 プラスチックのストローが。それだけだと不足かと思い、牛島は言葉を足す。

「俺は噛む力が強い」

 紙のストローでは、牛島の噛む力に耐えられない。ややあって苗字は自らのプラスチックのストローを差し出した。牛島は有難く交換させてもらうことにする。後から苗字はストローが紙でも気にしないのだろうかと思ったが、嬉しそうに飲んでいる様子からすると大丈夫なのだろう。牛島のとあるオフの放課後の出来事だった。

 その翌日の学校にて、苗字は何を考えているのか牛島に向かって宣言する。

「私、噛みつかれるのも頑張って我慢するから!」

 牛島は「何か勘違いしていないか」と言うが、苗字は逃げるように去ってしまう。牛島が苗字に噛みつくようなことを示唆しただろうか。牛島としては、苗字にそんな乱暴を働くつもりはない。

「何? 今の」

 隣で聞いていた天童に事の次第を説明する。昨日一緒にファストフード店に行ったが、恋愛を匂わせるようなことは何もなかった。噛みつくなど牛島はするつもりない、と。

 話を聞いた天童は呆れたように目を細めた。

「恋愛的なことはないって言うけどさ、放課後二人でマック行く時点でもう好きじゃない? お互い」

 牛島は我に返る。二人の間に恋愛感情はないと思っていたが、貴重なオフの時間を費やす時点で好きなのだ。この気持ちを伝えるには、やはり噛みついてもいいだろうかと言うしかないのだろうか。それとも、噛みつきはしないが付き合ってほしいと言うべきだろうか。頼りにしていた天童は「後は頑張って」と去って行ってしまったので、自分で考えないといけない。恋愛は難しい。けど面白い。牛島は自分の中に湧き上がる衝動を認めた。