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「花火の写真って絶対後で見返さないですよね」
「それ今言うことかな?」
 花火大会で打ち上がる花火を必死に写真に収めていた時のことだ。私の横で、赤葦はこともなく言い放った。確かに私の携帯はスマホではなくガラケーだし、画質は荒いだろう。ただの光となった花火を目当てに後から見返すことはあるまい。今日の思い出を振り返ることが目当てなら、あるかもしれないけれど。
「なら今肉眼で花火を見ろってこと?」
 ロマンのない奴だと思いながらも、赤葦に尋ねる。私のコンタクト越しの目は、どこまでこの花火を記憶していられるだろうか。十年経ったら忘れてしまうのだろうと思うと、今から切なくなる。
「いいえ」
 思わず赤葦の方を振り向くと、赤葦の顔半分に花火の青が反射して幻想的な光景に見えた。花火大会の喧騒はそのままなのに、急に私と赤葦が二人きりのような錯覚に陥る。過度な人混みは、私達に匿名性をもたらしてくれる。私は花火なんかより、赤葦の方を写真に収めるべきではないかとすら思っていた。
「後で見返す花火よりも、この瞬間に打ち上がる花火よりも、俺を見てください。今日、二人で花火大会に来たことに意味があります」
 俯きそうになった私の顎を赤葦が持ち上げた。高校生の男子が、花火大会に異性を誘う意味を私はとうに理解している。その上で私は今ここにいるのだ。花火の写真よりも、肉眼で見ることよりも、隣にいる赤葦を意識すべきだとは正論だ。今日の振る舞い次第で、私達の関係性すら変わってしまうかもしれないのだから。
 私は言われた通りに赤葦の顔を見た。赤葦の顔には今度ピンクの花火が反射して、圧倒的な光が赤葦の顔に深い影を落としていた。もう携帯なんか弄っていられない。私は、赤葦に夢中だ。