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 友達に連れられてきた合コンで、私は懐かしい顔を見つけた。高校時代子供なりに付き合っていた相手・佐久早聖臣だったのである。立ち止まって驚く私に対し、聖臣は至って平然としていた。どうせ私のことなどどうとも思っていなかったのだろう。高三の時付き合っていたとはいえ、進路が分かれると私達は自然消滅という形で別れた。連絡先はスマートフォンに残っているが、連絡したこともされたこともない。まさか直接会うとは思っていなかったが。

「何、知り合い?」

 周りに聞かれ、私はどうしたものかと思う。元恋人などと言っては気を遣わせてしまうし、かといって嘘をついてまで合コンに参加したいというわけでもない。なかなか口を開かない私の代わり聖臣が呟いた。

「彼女」
「えっ!?」

 途端に沸き出す周囲を見て私はいたたまれない気持ちになる。

「こんな所参加してて大丈夫なの!? ほら彼氏といなよ!」
「彼女いないって嘘つくなよな!」

 後々面倒なことになりそうだが、結果としてこの場は抜け出せたようである。聖臣と二人押し出されるようにして店を出ると、私達は目的地も決めずに夜の街を歩いた。

「……ありがと。おかげで助かった」

 聖臣は私が合コンに参加したくないことを知っていて、抜け出す口実を作ってくれたのではないだろうか。何から話せばいいのかわからないが、私はひとまず礼を言った。聖臣は「別に」くらいしか言わないだろう。

「別に。ていうか事実だし」

 予想通りの言葉の後、信じられない文言が続いた。私と聖臣が付き合っている? それは三年以上前の話だ。

「何言ってるの? 私と聖臣は別れたでしょ、自然消滅して」

 私は高校を卒業したばかりの頃を思い出す。毎日ではなくとも交わしていたメッセージのやりとりはなくなり、私を小突く人もなくなった。自然に別れたとはいえ、それなりに寂しかったものである。感慨に耽る私の横で聖臣が平然と口を開いた。

「別れ話はしてない。だからまだ別れてない」

 何という屁理屈だろうか。私は信じられない目で聖臣を見る。

「何年も連絡すら取らないで付き合ってるって言うつもり!? ていうか聖臣だって大学入ってから彼女いたでしよ!」
「心の中にあったのはずっとお前だった」
「ほらやっぱり別の女の子と付き合ってた!」

 私が威勢よく指摘してみせると、聖臣が怠そうに私を見下ろした。

「嫉妬してんの?」

 ここで否定するのも肯定するのも聖臣をずっと好きだったと言っているみたいで、しかし心の奥で少なからず聖臣を想っていたのは確かで、私は何も言えなくなった。