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「すまんな、週刊誌撮られてもうた」

 私は思わずため息をついた。侑が週刊誌に撮られるのはもう何度目かもわからない。とにかく女好きというイメージが先行している侑はモデルから女優まで幅広い女に狙われていた。また実態もイメージの通りなのか、侑は複数人で食事に行ったり、遊びに出かけることがあった。芸能人には芸能人の付き合いがあるからと自分に言い聞かせ許してきた私だが、ホテルから出てくるところを撮られていたら本当に別れるかもしれない。私が甘くするから侑がつけ上がるのだろうな、とは思いつつも咎める言葉は出てこなかった。

「気付けて」

 それだけ送り、スマートフォンを枕元に投げて寝る。何も言われないより、こうして報告してくれるだけまだ彼女だと認識されているのかもしれない。

 侑の連絡から一ヶ月が経った。例の週刊誌が発売され、侑の熱愛疑惑は日本中に放たれた。世間はまた宮侑かと呆れた様子だったが、今回ばかりは私が違う。私はネットニュースを見るなり侑に電話をかけると、必死の形相で怒鳴り込んだ。

「もしもし! あれ何!?」

 野太い声を出す私とは対照的に侑は楽観的な声を出す。

「よく撮れとったやろ?」

 人は何回も週刊誌に撮られるとその写りを気にするようになるらしい。だが今回は特別なのだ。

「何で私が映っとんねん! 先に言えや!」

 またどこかのモデルかアイドルだろうと思って記事を開いた私は、証拠写真を見て目を剥いた。そこにいたのはモザイクがかけられた一般人――私だったのである。

「そら彼女やし熱愛なら名前ちゃんに決まっとるやん。嬉しいサプライズやろ?」

 軽薄な声を出す侑に怒鳴りつけたいのをなんとか堪える。熱愛なら私に決まっていると言っておいて、今まで何回もモデルと撮られていたのはどこの誰だろうか。週刊誌に撮られるサプライズなど何も嬉しくない。

「私の私生活どうしてくれんねん!」
「週刊誌デビューおめでと〜」

 至って呑気な男に腹わたが煮えくりかえって、私は怒りのままに通話を終了した。試しにSNSを検索してみると、モデルやアイドルとばかり報道されていた侑の突然の一般人との報道に動揺する声が並んでいる。「今度は本物なんじゃ……」その投稿を見た途端、私は布団を被って丸まり込んだ。