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「私が高身長好きだから身長伸ばしたいの?」

 単調な声を投げかけると、白布は私に目をやった後残り三割程度を飲み切って口を離した。

「ちげぇよ。部活のためだ」

 白布が部活に熱意を注いでいることは知っている。だが最近の白布の牛乳へのこだわり方は異常だ。去年は毎日牛乳を飲んでなどいなかったし、身体測定の日に背伸びをしたというエピソードも聞いたことがない。いくらバレーが身長の必要なスポーツといえど、白布が変わりだしたのは二ヶ月前――私と前後の席になった時なのだ。

 本人が気にしているであろう身長に言及されて気分を悪くしたのか、白布はふてぶてしい態度で私を見下ろした。

「お前身長高い奴が好きなのか」

 いつもの不機嫌かと思いきや、その実瞳の奥は私の答えを待ち侘びるように震えている。私は頬杖をついて机にもたれた。

「やっぱり私のこと好きなんじゃん」
「違え。ただバスケ部とバレー部の男には会うな」

 白布の、自分の気持ちが本人に悟られているというのに堂々と片思いを続ける度胸にだけは感服する。バレー部の男がダメなら白布にも会えないじゃん、とは指摘しないことにした。

「独占欲だ」
「違う。まだ付き合ってない」

 私は眉を吊り上げて白布を見てから白布が気まずそうに目を逸らすことを確認した。いつ付き合おうと言ってくれるのかは聞いたら可哀想だろう。

「ふーん。頑張って」
「おう」

 白布が牛乳パックをゴミ箱へ捨てる。私があまりにも焦らしていると校内中の牛乳が売り切れてしまいそうだと苦笑した。