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「はぁ〜」

　休み時間に長いため息を漏らすと、意味もなく隣にいた侑は興味なさそうに指先を弄っていた。話をしていいというサインだと解釈した私は勝手に口火を切る。

「告白されたんやけどな、断る勇気がない」

　侑はさして驚く様子もなく聞き入れた。私が他の男に告白されたことなど侑には取るに足らないことなのだろう。

「そんなん俺が好きって言えばいいやん」

　提示された解決法の杜撰さに思わず私は抗議する。

「誤魔化すんかい！」
「好きなんちゃう？　知らんけど」

　侑にとって私が侑を好きであるか否かということもどうでもいいのだろう。侑は私に好かれることや、私が侑を好きだという噂が流れることを臆していないようだった。あまりに恋愛慣れすると異性関係は緩くなるのだろうか。私はまたため息をつきたい気持ちになる。

「大事なことを適当に……」

　私の呆れた気持ちを感じ取ったのだろう。侑は言い訳をするように言った。

「別にお前が俺のこと好きでもちゃうくても俺の態度は変わらんで」

　恋愛が絡んでも友達でいてくれる懐のいい男だと言えば聞こえはいいが、これは私への脈がないということではなかろうか。普通意識している人に好かれたら少しは態度が変わるはずだ。

「私今フラれとる？」

　口を尖らせて尋ねると、侑はなんてことないように答えた。

「彼女でも友達でもええって意味や」
「やっぱり私告白されとるんか！？」

　侑は彼女として絶対なしだからではなく、今の関係でも彼女に対するものと変わらない態度を取っているという意味で言ったのだ。そういう大事なことは雰囲気を作って言ってほしい。気付けば当初話題に上った男子生徒のことは忘れ、私はは侑に好かれているかどうかにばかり興味が移っていた。侑は私の感情を敏感に察知したのだろう。

「ちゃうわアホ。いいから早くモブからの告白断ってこい」

　侑がそう言うのなら、侑の提案通り「侑が好きだから」という言い訳を使ってもいいだろうか。私は期待に胸が震えるのを感じた。