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※なんでも許せる方向け

 編集部の赤葦さんと同じ部屋になってしまった。問題は私達が成人した男女で、ここは出張先のホテルであるということだった。勿論ビジネスホテルではあるものの、一つの部屋で寝る男女がすることと言えば一つである。赤葦さんは慣れた手つきで荷解きをした後、ネクタイを緩めながら言った。

「礼儀として手は出しますがこれからのことに期待はしないでください」

 一瞬呆気にとられた後、私は思わず叫ぶ。「どう言う意味!?」赤葦さんの言っていることがわからなくとも、馬鹿にされていることは理解できた。赤葦さんはネクタイを解くとハンガーにかけた。

「俺は行きずりでセックスするような人を恋人には選びたくないという意味です」

 段々赤葦さんがどういう人間であるか掴めてきた。女と同じ部屋になれば一応手は出す俗らしさは持っているものの、自分の交際相手には清廉潔白を求めているのだ。何という高い理想の持ち主だろうか。さしずめ私はセフレか一晩の相手というところだろう。

「彼女いるの?」
「います。でも俺が出張先で何をしているかなんて知らないでしょう」

 試しに聞いてみればこれである。赤葦さんは彼女がいても私に手を出すことをやめないようだった。本当に好きなのかと聞きたくなる。彼女のことは蝶よ花よと大事にしているのだろうが、その実どこかで見下しているのだろう。

「じゃあ浮気だね」

 私が揚げ足をとるように言うと、赤葦さんはこちらを振り向いて言い放った。

「他の男に浮気しないでくださいね」

 まるで文脈に合わない言葉に私は目を丸くする。

「自分も浮気なのに?」
「それとこれとは別の話です」

 彼に対する解釈を正そう。赤葦さんは彼女どころかセフレにも理想を押し付ける自分勝手な男だ。この理想や自意識の高さは偏に彼自身の有能さから来ているのだろう。誰もが彼を持て囃すから、あぐらをかくようになってしまったのだ。もう誰も赤葦さんを止める人はいない。彼に誘われたら、女性は皆頷いてしまうだろう。文句の一つでも言ってやろうと思っていた私も、段々と彼の妖艶さに惹かれていた。