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 今年も残り数ヶ月になった。つまり、双子の誕生日がやってくる。幼馴染として私は昔から二人の誕生日を祝ってきた。宮家に招かれてケーキを食べたこともあれば、お小遣いでプレゼントを買ったこともある。ただ、思春期に入ってから――侑や治に彼女ができるようになってから、自然と躊躇うようになってしまった。二人が誕生日を共に過ごしたいのは私ではないのではないか。気合いの入ったプレゼントを贈ったら、身分を弁えろと彼女から睨まれてしまうのではないか。二人の好きなものを考えるのはやめ、簡単なコンビニのお菓子を贈った。侑は不満そうな顔をしていたけれど、治は「ありがとう」と言って受け取ってくれた。それ以来、コンビニお菓子を送るのが二人の誕生日の正解だった。

 今年も例年の通りにしようと思っていたのだが、一つ懸念があった。ついこの間のインターハイで、二人が全国準優勝という快挙を成し遂げたことへのお祝いをしていないのだ。今年くらいは豪華なお祝いをしてもいいだろうか、と二人の恋愛状況を思い出す。治は少し前に付き合い始めた彼女がいたが、侑はいなかったはずだ。治の彼女には目を瞑ってもらうとして、今年はきちんとギフトを選ぼう。

 通販サイトをスクロールしている時、インターホンが鳴った。出てみれば、治が野菜のお裾分けを持ってきたところだった。ちょうどいいとばかりに私はスマートフォンの画面を見せる。

「今治達のプレゼント選んどったとこなんやけど、何か欲しいもんある?」
「欲しいもんなぁ……」

 長居するつもりなのだろうか。治は家へ上がると私の部屋に居座った。机には進路調査票が出したままになっている。私は兵庫の大学に進学するつもりだった。治は、どこのチームに入るのだろうか。

 治は進路調査票に視線をやった後、薄い笑みを浮かべた。

「いつか祝えんくなる分まで今ここで祝っといて」

 は? と、思わず声を出したくなる。何故治は世を憂いたような、切ない顔をするのだろうか。私が何か言うより先に、治は私の手を引いた。

 唇と唇が重なる。顔を離してから、私は随分と自分の気持ちを無視してきたのだと思った。正確に言えば、それは消そうと思えば消せる程度の想いだったのだろう。だが塵も積もれば山となる。一緒にいた年数の分、私の気持ちは拗れている。

「今ここで、俺のもんになって」

 多分、私と治が交わることは今日一度しかない。それでも平行線よりはずっといいではないかと言い聞かせて、私は治に腕を回した。