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「付き合うってお前本気で言ってんのかよ」

 私の告白を聞いた聖臣は、驚くでも喜ぶでもなく顔を顰めた。無理もない。私達はずっと幼馴染だったのだ。少なからず私からの好意を感じていたかもしれないが、関係性を変えるまでに至るとは思っていなかったのだろう。今まで当たり前に隣にいたからこそ気まずいのかもしれない。

「もう高校生だぞ。セックスもする。できんのか」

 聖臣は一段と声を低くして、私を試すように覗き込んだ。抵抗がないと言えば嘘になるが、私の聖臣を好きな気持ちは本物である。

「で、できるよ」

 意地を張ったまま言うと、聖臣のベッドに押し倒された。聖臣は暫く無表情で私を見下ろした後、「はー……」と息を吐いて私の上にのしかかった。

「お前がよくても俺が無理だ。今までずっと好きだった奴と付き合ってすぐにセックスとか、無理だろ普通」

 聖臣も案外奥手であったらしい。突然そういう展開にならずに済んで私は安堵していた。幼馴染との恋愛についていけないのは私も同じなのだ。私は聖臣の髪を肩に感じたまま天井を見上げた。

「俺の心臓の音、聞こえる?」
「聞こえる」

 重なり合った胸から、聖臣の速い鼓動が聞こえる。きっと私の心臓の音も聖臣に聞こえているのだろう。聖臣も人並みに緊張するのだと思うと、どこか嬉しいような気持ちになった。

「私達、別に無理しなくていいと思う」
「お前が付き合うって言ったんだろうが」
「セックスする必要はないってこと」

 聖臣の言葉を正すと、恨みがましい視線がこちらへ向けられる。聖臣は私を見据え、文字通り上から話し始めた。

「いいか? 俺はセックスしたい。だけど相手がお前だと踏み出せねぇ」

 それは私に魅力がないということではなく、私を大事にしてくれるからだということはわかっている。しかし随分情けないことを堂々と言うものだと、私は笑い出してしまった。

「おい、お前何笑ってんだ。処女のくせに」
「今それ関係ある?」

 私を懲らしめるように鼻をつまむ。息のしづらさに私は体を捻って抵抗した。すると聖臣が私を捕まえる。セックスなどしなくても、今はこのくらいがちょうどいい気がした。