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 同窓会のお知らせが送られてきた。私に特別な所があるとすれば、同じ紙を持った人物が隣にいるということだ。一つ下の赤葦が高校を卒業してすぐ、私達は付き合い始めた。順調に彼氏と彼女のあれこれを重ねた私達は、同棲して五年目になる。社会人となった今からしてみれば高校時代など眩しい過去だ。青春の二文字に目が眩んで、私はおじさんのような言い方をしてしまう。

「あの頃はよかったねえ」

 若さというものは無敵だ。無理だとわかりきっていることだって無防備に挑戦してしまう。思えばあの頃の一日は、今の一日よりずっと長かった気がする。部活に勉強に忙しかったはずなのに、私の日々には色褪せない思い出があった。同窓会のお知らせを一度見て、ひっくり返して、もう一度表にする。私の無意味な行動を遮るように、赤葦は当然顔をこちらに向けた。

「これでもまだ、昔の方がよかった?」

 触れた唇が離れて、赤葦の二つの瞳に見つめられる。過去を美化してしまうことは誰にでもあることだ。だがあの頃はまだ、赤葦と付き合っていなかった。赤葦とこういうことをできるのは、今だけの特権ではないか。

「ううん」

 私は短く言って、同窓会のお知らせをしまう。みんなが出席したら、私達のことを伝えよう。