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 友人達が私をいじるのはいつものことである。総じてテストの点数が平均より低い私の友達がやる分には構わないのだが、高得点、いやクラス最高点の疑惑すらある昼神にされると不思議と腹が立つのだった。

「名前ちゃんどうすんの、そんな点とって」

 意地悪に笑う昼神は余裕で補習をパスしているのだろう。昼神に口で勝てない私は、禁句とも言える言葉に手をかけた。

「昼神だって私のこと好きなくせに!」

 これを言えば昼神はもう何も言えなくなると思ったのである。好きな人に自分の気持ちを指摘されて動揺しない人はいないだろう。しかし、昼神は悠然と構えて言い返した。

「そうだよ?」

 こちらが間抜けた声を出しそうになる。自分の気持ちが知られているというのに、その余裕は何なのだろう。

「俺達は思春期に恋愛をして大人になる。それが将来結婚して子供を産むことに繋がる」

 昼神はまた小難しい言葉を並べた。このまま少子高齢化がどうこうなどと言うつもりだろうか。子供に関してはセクハラだと思うのだけど。

「人を好きになることはごく自然なことだよね」

 昼神に見つめられ、私は言葉をなくした。高校生として、恋愛をするのは至って普通のことである。それをからかっていた私が子供だと言われているみたいだ。

 私の気まずさなど知らず、昼神は能天気に微笑んだ。

「それにしても、名前ちゃんが俺の気持ちに気付いてくれてたなんて嬉しいなぁ。俺、好きだなんて一言も言ってないのにね」

 好きな人に気持ちを知られて、気まずいではなく嬉しいと思う人がいるだろうか。実際目の前にいるのだけど、昼神を普通の高校生とカウントしていいのかはわからない。昼神のことをよく見ていたと言われているような気持ちになり、私は言葉を探す。

「昼神がわかりやすいからでしょ!?」

 実際には昼神の心を理解するなど到底難しいことなのだけど、昼神は私の言葉を詭弁だと思わなかったらしい。

「俺のこと理解してくれるんだ」

 そう幸せそうに笑われてしまえば、こちらが毒気を抜かれてしまう。いよいよ反論する気力もなくなった私は、大人しく昼神を見ていたということにされるのだった。