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「好きだ。だけど面倒だから付き合いたくない」
プラスともマイナスともとれる発言に、私は思わず笑ってしまった。佐久早は告白を流されて機嫌を悪くしたようだが、笑うなという方が無理だろう。告白の後に付き合いたくないと続ける人がいるだろうか。
「何でって聞いていい?」
私が尋ねると、佐久早は冷静に「どっちの?」と聞いた。そういえば、私は二つのことを告げられたのだった。私は少し迷ってから、「付き合いたくない方」と答えた。
「デートに連れてったり、束縛されたり、面倒くさい。俺は俺のままでいたい」
要するに、佐久早は人間関係の構築やコミュニケーションが得意ではないのだ。人といるよりも一人でいたい、佐久早はそのようなタイプだろう。だが人は意図せずして恋愛をしてしまうのだから難しい。
「じゃあもう一つの方は?」
佐久早ほど人嫌いな人間がどうして私を好きになどなったのだろうか。尋ねてみれば、佐久早は不快を露わにした。
「それが俺にもわからないから困ってる」
これは全く予定外の恋愛であるということだ。佐久早にとって、私を好きであることは面倒なことなのかもしれない。多分困った末に私に打ち明けるという行動に至ったのだろう。
「じゃあ、やめれば?」
私を好きなことを。言外にそう言うと、佐久早は何故か上から目線で答えた。
「それができたら苦労しない」
今、結構な愛の告白をしたと思うのだけど、佐久早は気付いているのだろうか。私がまた笑い出すと、「おい、何笑ってる」と不機嫌そうな声が聞こえた。
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