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「北って人を好きになるん?」

 昼下がりの教室にて私が尋ねると、北は微塵も動揺せずに答えた。

「俺を何やと思っとんねん。俺やって普通に人を好きになるわ」

 突っ込みはするものの、顔や態度が平静通りなのであまり驚いているように見えない。本人も自分が普通の男子高校生とはかけ離れていることを自覚しているのだろうか。

「ただ、今は好きになるような相手がいないっちゅうことやねん」

 恐らく、北の恋愛している様子が想像つかないのはそれが理由なのだろう。私は三年になって北と同じクラスになったばかりだ。実際に北の恋愛している姿を見れば納得するのかもしれない。だが、今クラスメイトとして聞き捨てならない言葉があった。

「それって間接的に私のこともフっとらん!?」

 突然叫び出した私に対し、北は恋愛の話をしているとは思えないほど冷静に返す。

「フってないやろ。俺のこと好きなんか?」

 こういう所があるから、北は普通の高校生らしくないと言われるのだ。仮に私が好きだと言ったとして、北は顔色を少しも変えずにフるのだろうか。

「いや別に好きやないけど私かて北の周りにおるのに勝手にナシ判定されるんはなんかむかつくわ!」

 男子がよく告白されてもいないのに勝手に女子をアリ、ナシで判定しているのを見ると反感を抱く。北がしたことはそれではないが、私は何故か北の言葉を聞き捨てならなかった。

「じゃあお前がアリかもう一回考えてみるわ」
「頼むわ!」

 威勢よく返した私はまるで考えていなかったのだろう。もし北に私がアリだと言われたら、どうしたらいいかということを。自信はあるくせに北との恋愛模様が想像つかなかった私は、この先に広がる可能性を知らなかった。