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 最近、男友達と遊び過ぎているという自覚はあった。遊んでいるといえど休み時間に女友達を含めて一緒に話したり、休日に男女グループで出かけたりするだけだ。罪悪感が募るのは、ある後輩の存在のせいかもしれなかった。

「すみません、俺苗字さんのこと好きじゃなくなりそうです」

 黙ってフェードアウトすればいいものを、飛雄はわざわざ私に伝えに来た。その律儀さと不器用さが飛雄らしい。私は口惜しい気になりながらも意地を張ったような声を出す。

「別にいいんじゃない? 私達ただの友達なんだし」

 友達、先輩と後輩。私達を表すならそういった言葉だ。飛雄に嫌われようが、私が少し寂しいというだけでどうってことないのだ。

「それでも」

 食い下がる飛雄に私は言葉を返す。

「逆に何で私のことを好きじゃなきゃいけないって思うの?」

 すると飛雄は初めて気付いたかのような顔をして、自分に言い聞かせるように言った。

「確かに……別に俺苗字さんを嫌いになってもいいんですね」

 今まで、私を好きである以外に選択肢がなかったのだろう。早く私を嫌いになって、楽になってほしい。そして飛雄と同じくらい純粋で初心な女の子と幸せな恋愛をすればいい。そう思っていたのに、飛雄は決意したような瞳でこちらを見据えた。

「やっぱり嫌です。俺は苗字さんを、好きでいたい」

 これは面倒な男に好かれてしまったと思いつつも、心の奥で喜んでいる私も面倒な女なのかもしれない。