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※BJの本拠地が判明する前に書いたものなので侑が東京に住んでいるという設定になっています。


「好きや」

侑が言うと、私は目を見開いて固まった後落ち着かない動きで侑を覗き込んだ。

「ど、どうしたん? いきなりそんな……何、明日世界終わる?」
「終わるかアホ! 人が告白してんだからちゃんと聞けや!」

侑はいつもの調子で突っ込んだ後、侑にしては珍しく物思いに耽るような表情で遠くを見た。

「どんなものも、いつかは終わるんやな思って。ずっと今のままでいる保証なんか、何にもないやろ」

私は侑の言葉を聞きながら侑が見ている方を見た。それは代わり映えしない東京の景色で、田舎出身の私達にとっては東京タワーが見えるのが少し珍しいというくらいだった。私が東京タワーを初めて見たのは、侑を東京散策に連れ出した時だった。

高校の頃から侑のことは好きだったから、東京の大学に行くと告げた時侑は少なからず自分の影響を考えたことだろう。実際、東京へ行く理由の半分くらいは侑のためだった。告白もしていないけれど私が侑を好きだということは本人には筒抜けで、受験の前にはわざわざ本人から「俺のために頑張れ」なんていうメッセージが来たくらいだ。無事第一志望に合格して東京へ行った後も、私と侑の仲は続いた。前と変わったのは、私達が体を重ねるようになったということだ。

私の狭いアパートに入った侑が、「ヤったことあるか」と聞いた。私はそんな経験はなかったけれど、ここでないなんて言ったら侑に相手にしてもらえないんじゃないだろうかと思って見栄を張って「ある」と答えた。そんな嘘はすぐにバレ、私は侑に鼻をつままれた後家具量販店の安いベッドの上で侑に丁寧に抱かれた。侑は初めてなのかとか、私達の関係が何なのかはどうでもよかった。

それから私達は定期的にセックスをするようになった。セックスをしていること以外は前と何も変わらない。私が侑を好きで、侑はそれを知っているという関係だ。私達の行く末がどうなるのかは考えたことがなかった。侑が身を固めようと思ったら私はあっさり捨てられるのだろうと思っていた。しかし、侑にとって私は思ったより大事な存在であるらしい。侑の言葉を借りるならば、私の気持ちが今のままでいる保証なんかないということなのだろう。

「私は変わらんかもしれへんよ? 十年経っても二十年経っても、ずっと侑を好きでいるのかも」

想像しておぞましくなった。既に家庭を持っている男に、高校時代から片思いをし続ける中年。侑次第ではそうなってしまうかもしれないのが恐ろしい。

「それはわからんやろ。今までずっと放し飼いみたいなもんやったからな。ちゃんと首輪つけて、俺のもんにしとこ思っただけや」
「ふーん……」

私は相変わらず窓の外の東京タワーを見た。今、侑はこっぱずかしい表情をしているに違いない。プライドの高い侑のことだからその姿を私に見られるのは嫌がるだろう。だから、今日は勘弁しておいてやる。その代わり、私のことをいつ好きになったのか等聞きたいことは後できっちり聞くつもりだ。今日の夜は、覚悟しておいてほしい。