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「二宮さんって私のこと好きなんですか?」

 誰もいない隊室にて私が尋ねると、二宮さんは画面から目を離さないまま答えた。

「好きじゃない」
「二宮さんって好きじゃない相手を毎日送って行ったり頭ポンポンしたりご飯奢ってくれるんですか?」

 この際私が二宮隊の隊室に不法侵入しているということはどうでもいい。隊長の二宮さんがそれを許している時点で私は二宮隊に限りなく近い何かなのだ。それは二宮隊に、ではなく二宮さんに、と言った方が正しいかもしれない。私は二宮さんに構い、二宮さんが時折優しい仕草を見せて、犬飼先輩達がそれをからかうというのが普段の流れなのだ。

 二宮さんは反論の言葉をなくしたようで、私に言われるがまま黙っていた。沈黙は肯定と捉える。でもやはり二宮さんの言葉で好きという言葉が聞きたい。

「ねえ二宮さん」

 急かすように私が話しかけると、二宮さんは渋々といった様子で口を開いた。

「お前の思う通りだ」

 あくまで私に選択を委ね、自分の口からは言わないところが二宮さんらしい。だが私はそれで満足するような女ではない。

「じゃあ二宮さんは私にゾッコンのラブラブなんですか?」

 試しにふっかけてみると、二宮さんは心外だという様子で顔を上げた。

「誰がそこまでと言った。ただ好きなだけだ」
「二宮さんから好き頂きましたー!」

 誘導尋問のようだろうか。それでも好きと言われたことに変わりはないのだ。舞い上がる私を二宮さんは呆れたような目で見ていた。