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 どの仕事も年末は忙しくなるものである。一見年末年始とは無関係に思える出版業界も、新年の企画を練るのに会議三昧だった。また新しくタスクがあるのだろう。同じ部署の赤葦さんが、書類片手にこちらへやってくる。

「新企画について会議をしたいんですけど、来週空いてますか?」

 私は素早く手帳を開いた。来週は別の会議が入っているが、一日かかってしまうような取材はない。どこかに会議をねじ込むことは可能だろう。

「空いてますよ」

 私が言うと、赤葦さんは平然とした表情で言い放った。

「そうですか。ではやはり今週中に終わらせてしまいましょう」

 今週中に終わらせるなら何故来週の予定を聞いたのだろう。赤葦さんは仕事に無駄のない人だ。一体今のやり取りは、何だったのだろうか。私の疑問を汲み取ったかのように赤葦さんが答えた。

「今のはクリスマスの予定の確認をしただけですよ」

 ふ、と上品な笑みを浮かべられる。言われるがままに手帳を確認してみれば、来週はクリスマスだった。仕事に奔走していてすっかり忘れていたのだ。

「今週中に仕事が終わったら、クリスマスは俺と過ごしませんか」

 今になって、赤葦さんにクリスマスのお誘いをされていたのだと気が付く。クリスマスには仕事がひと段落しているはずだ。いや、させなければならない。

「……仕事頑張ります」

 私が照れを隠すようにデスクへ向き直ると、赤葦さんは「頑張ってください」と笑った。