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 ファンミーティングの際にはレプリカユニフォームを着、身につけられるグッズは全て付けていく。だから印象に残っていたのだろう。我が推しである影山選手は私の姿を見るなり困ったような顔をした。

「あの、そんなに俺のこと好きで大丈夫ですか? 家賃とか払えてますか」

 私はグッズ課金勢であり、この間も電気料金の支払いがピンチであったところだ。その言葉は私に刺さる。暫く黙り込む私を見て察したように影山選手は続けた。

「外食とか減らした方がいいと思います。俺も一人暮らししたの最近ですけど」

 もっともなアドバイスではあるのだが、食費の前に削れるものがあるのではないだろうか。まさに今私が付けているような、グッズの数々が。

「影山選手のこと推すのやめた方がいいとは言わないんですね」

 私が試しに言ってみると、影山選手は当然といった様子で口を開いた。

「あなたには俺が必要じゃないですか。まあ、俺にもあなたが必要ですけど」

 あまりにも淡々と語られる言葉が、裏がないことを示している。私の想いは影山選手に届いていたのだと嬉しくなった。そして、私も影山選手に必要だったのだ。期待をして影山選手に話しかけようとした瞬間に、待ち時間終了の合図が鳴った。節約をしろと言われたばかりなのに、また影山選手の元へ通うはめになりそうだ。