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 聖臣と神社に来た。この時期の神社は参拝客も少なく、どこか閑散としている。白い空気の中私達は手を合わせ、神様に祈った。恐らく聖臣は今年最後の春高のことを、私はすぐそこに迫っている受験のことを。

 十分なほど手を合わせてから、私達は本堂を離れた。私は売店に用があるのに対し、聖臣は神社の中を散策したいようだった。どこかへ歩き出してしまった聖臣をよそに、私はお守りを物色する。この近辺では一番の規模を誇るだけあり、土産物は充実していた。私は一つ手に取り、売り子の人へ渡す。

 白い紙袋を手に振り返った時、ちょうど聖臣が戻ってきた。

「買ったのか」

 その言葉に私は袋の中身を見せる。聖臣はそれまでの落ち着いた雰囲気とは一変し、目を見開いてみせた。

「馬鹿野郎! 一般受験のくせになに恋愛成就にしてんだよ!」

 私が買ったのは学業成就ではなく恋愛成就のお守りだったのである。聖臣にとってこれが気に入らないようだった。私も恋愛の方が大事という意味ではなく、受験は自分で叶えるという意味だったのだが、聖臣には通じていないようだ。

「恋愛は俺が叶えてやるから」
「聖臣が?」

 思わず聞き返せば、何の迷いもない顔と目が合う。

「お前が好きなのは俺だろうが」

 何も言い返せないでいると、聖臣は私のお守りを没収した後学業成就のお守りを買った。

「受験が終わったら叶えてやる。いいな?」

 私は照れを隠せないまま頷く。お守りなどよりも、聖臣の今の言葉の方が余程効果がありそうだ。