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「名前、だーいすき」

 そう言って飛びかかる五条を名前は素早い動作でかわした。

「ありえないから!」

 名前の様子は五条の告白を吟味しているというより、五条の告白に過剰反応しているようである。とはいえ、名前が告白されるたび中学生のように照れているわけではない。他の男が真剣に――例えば、きちんと場所と時を選んで告白した時は誠実に断っているつもりである。しかし五条とて真摯に告白しているつもりだ。いつもの軽い表情をやめ、名前に向き合う。

「何で? 何で僕の気持ちは否定するの?」
「そ、それは……」

 名前は言葉に詰まる。普段のように最後までおちゃらけていてくれたら、まだ返しようがあった。しかし五条は、まるでらしくない真顔なのだ。その表情は名前を問い詰めるかのようでもあった。名前が困っていることに気付いたのだろうか、五条は再びおどけてみせる。

「わかった! 僕のこと好きだから!」

 普段通りの五条に安堵しつつ、思わず語気が強まる。

「違うわ! 五条があんまりにもイケメンでハイスペで手が届かないから!」

 名前が叫ぶと、五条は「それもう僕のことが好きじゃない?」と首を傾げている。名前の逃げ場は限りなくないに等しいが、五条がいつもの軽い調子ならまだ救われる。五条がふざけながら告白して、名前が断る。名前達はそれでいいのだ。