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「好きだ」

 佐久早に告白され、私はその言葉を噛み締めてから冷静に口を開いた。

「そっか……ありがとう。でも私佐久早のことは友達だと思ってて」

 バレー部のエースである佐久早に告白されたことは嬉しい。自分が異性からそういう目で見られていたという喜びもある。だが私は今すぐ佐久早と異性のことをする気になれなかった。よかったらこのまま友達から、という言葉を遮り、佐久早は顔を背ける。

「じゃあいい」
「何で!?」

 そのまま去ってしまいそうな態度に、思わず私は佐久早を引き止めた。普通好きなら友達からでも喜ぶものではないだろうか。そうでなくとも、話は最後まで聞くべきだ。

「俺だけ好きでも意味がない。好かれないなら好きでいる理由がない」

 そう語る佐久早は、典型的なゼロか百か思考であるように思えた。佐久早は結構変わった奴であったことを思い出した。理解はできるが、それだと私のことを本気で好きなのかと聞きたくなる。

「極端すぎない? 佐久早の私への想いってそんなんだったわけ……?」

 探るように言うと、佐久早は堂々と言い放った。

「死ぬほど好きだから両思い以外嫌なんだろうが」
「そ、そっか……」

 そのあまりの恥じらいのなさにこちらが照れてしまう。確かに佐久早は私のことが好きなのかと疑ったが、「死ぬほど」好きと答えられるなど思っていなかったのだ。

「じゃあな」
「ちょ、ちょっと待って」

 今度こそ背を向けた佐久早を、勇気を出して呼び止める。

「なんだよ」

 佐久早の態度はとても好きな人に対するものだとは思えない。それでも死ぬほど好きだと言われ、心が揺らいだのは事実だ。

「今、少し好きになったかも」

 私にとってはかなり踏み込んだ発言だというのに、佐久早はあっけらかんと言った。

「は? お前本当意味わかんねぇな」

 きっと佐久早のことだから、じゃあ試しに付き合おうとか自分も好きだとかは仕切り直して言わないのだろう。面倒な人に好かれてしまった。その上私も好きになりかけているのだから、救いようがない。私は佐久早の後ろ姿をじっと見つめた。