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「好きです」
私としては精一杯告白したつもりなのだけど、佐久早には誠意が足りなかったらしい。佐久早は訝しげな表情を浮かべると、疑うような声色で言った。
「本当に好きなのか怪しい。俺の好きな所五個言ってみろ」
私達は友達期間が長かったから、本気が伝わりにくいのだろう。佐久早のことだからからかわらていることも計算に入れているかもしれない。とにかく、本気で告白している私は佐久早のリクエストに応えるのみである。
「意外に優しい所とか……周りをよく見てる所とか」
「意外に」は余計だっただろうか。佐久早を見上げると、佐久早は別の所で引っかかったようだった。
「それ全部友達としてだろ」
確かに私が挙げた部分は友達にも挙げられるかもしれない。だが十分好きな人としてでも通用するものではないだろうか。
「なんか厳しくない!? 普通人を好きな理由ってこんなもんでしょ」
佐久早に訴えかけることも忘れ、私は不満を口にする。佐久早はポケットに手を突っ込むと、やさぐれたような声を出した。
「俺は無駄に舞い上がりたくないだけだ」
その言葉に私は目を瞬く。佐久早は今、私に大きな可能性を残していった。
「佐久早、私に好きって言われたら舞い上がるの?」
私に言われて漸く自分の言葉の意味に気が付いたようで、佐久早は慌てたように手を前に出す。
「待て、今のはなかったことにしろ」
そう言われても、恋する乙女の頭は都合よくできている。
「やだ」
面白がるように言うと、佐久早が悔しがるような目つきでこちらを睨んだ。形成逆転、今度は私の方が有利だ。
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