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「ヒュースさぁ、ちょっと態度がでかいんじゃない?」
名前が言ったのは、玉狛で食事をしている時のことだ。ヒュースは一応食べた食器を流しに持って行く程度のことはするが、ものの五分で食事を終え、自分の部屋に戻ってしまう。捕虜だから、という意味ではない。普通人が作った料理を食べる時は、もう少し美味しそうにするものではないだろうか。
ヒュースは鼻を鳴らすと、お椀をテーブルに置いた。
「お前が強請るなら言ってやるが、まあ不味くはない。このミソシルとやらは毎日食べたいと思える味だろう」
ヒュースにとって想定外の沈黙が続いた。名前が慎ましくしろと言うから丁寧に感想を述べたのに、何がまずいと言うのだろうか。名前は食器をまとめて席を立ってしまう。その足音が遠ざかった時、横に座っていたレイジが低く囁いた。
「あなたの味噌汁を毎日食べたいっていうのは、この国ではプロポーズなんだ」
ヒュースの目が見開かれる。皿洗いをする名前の表情は、下を向いていて見えない。
翌日、他の者が出て行ったのを見計らってヒュースは立ち上がった。いくら物怖じしないヒュースといえど、浮いた話を他のメンバーに聞かれるのは恥ずかしいのだ。
「あれは知っていて言ったわけではない!」
「あれ」が何を指すのかは名前も知っているのだろう。名前は照れたような、拗ねたような顔をヒュースに向けた。
「言葉自体は否定しないんだ」
そう言う名前は何の言葉を求めているのだろう。否定してほしいのか、ほしくないのか。ヒュースは得意げに鼻を鳴らした。
「言ったことを二転三転するのは弱い者がやることだ。お前と結婚する運命も受け入れよう」
ヒュースは名前へのプロポーズを撤回しないようだ。とはいえ、勝手に結婚にされるのは困る。
「合意したことにしないでよ!」
名前が噛み付くと、ヒュースは平然と返した。
「合意しないのか?」
そう言われてしまえばどちらに答えても墓穴を掘ることに違いなく、名前は黙り込んだ。ヒュースの得意げな表情が癪に触った。
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