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　最近、佐久早からの視線を感じる。それだけではない。佐久早はことあるごとに私に話しかけたり、紳士のように振る舞うのだ。誰が見ても佐久早が私を好きなのは明らかだった。周りの視線が痛いから、早く告白なり何なりしてもらって付き合うというところに落ち着きたいのだが、佐久早は一向にそれらしい気配を見せない。先に痺れをきらしたのは私の方だった。

「佐久早って私のこと好きだよね？　告白とかしないの？」

　随分自意識過剰なことを言っているという自覚はある。だが、こうでもしないと佐久早は変わらないのだ。佐久早は腕組みをした後、堂々と言い放った。

「わかりきってることを何で言う必要がある」

　もはや恥ずかしがるそぶりもない。あまりにも泰然とした開き直り方には一瞬の尊敬すら覚えた。しかしこのままでは、私は永遠に好奇の視線に晒されてしまう。

「佐久早が言ってくれないと付き合えないじゃん！」

　私が言うと、佐久早は簡単だとばかりに答えた。

「お前から言えばいい」
「だって佐久早の方から好きになったのに私が言うのはなんか違うじゃん！」

　本来佐久早の方がおかしなことを言っているはずなのに、気付けば私の方が振り切っていた。自分勝手なことを言っているという自覚はある。佐久早は何故か上から目線で私を見下ろした後、もったいつけて口を開いた。

「付き合いたいって思ってんならお前も好きなんだろ。付き合ってくださいって頭下げろよ」

　私を好きなのは佐久早のはずなのに、何故か私が交際をお願いする話になっている。ここまで全て佐久早の手の平の上なのだろうか。悔しいと思いながらも従うほかなく、私は体を屈めた。