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※現パロ

 話の流れで、鯉登と買い出しに行くことになった。鯉登と二人なのは偶々私達の都合が空いていたからだが、休日に二人で待ち合わせるなどデートのようだ、と一瞬頭を過ぎる。鯉登は友達なのだから、と思い直して私は歩みを速めた。鯉登のことだから、集合時間の十分前には着いているだろう。

 現地でそれらしい影を探すと、人混みの中で一人異彩を放つ人物がいた。全身スーツに花束を持っているのは、私の待ち人だ。対する私は、スウェットにロングスカートというラフな格好である。

「あー……ごめん?」
「謝るな!!」

 鯉登の顔は真っ赤だった。大方異性との待ち合わせだからと気合を入れたのだろうが、待ち合わせ場所に着いて違和感に気付いたのだろう。私もドレスまでいかなくとも、綺麗めの格好をしてくればよかった。

「私のことが好きなんだよね、プロポーズされるくらいの意気込みで来ればよかった」

 鯉登は「キェェェ!」と言って誤魔化すが、彼が私のことを好きなのは明らかである。鯉登よりわかりやすい奴などいないのだ。鯉登は相変わらずまでの大声で言った。

「プロポーズするつもりなどない! お前と出かけるのだからこのくらい当たり前だろう!」

 どれだけ私との外出を買ってくれているのだろうか。私は軽薄な笑みを浮かべながら、「そこはプロポーズしてよ」と言う。

「い、いいのか!?」

 途端に鯉登が期待したような表情で振り返るものだから、私は呆れ混じりに口にした。

「冗談だよ」

 何事にも本気すぎる鯉登と、二人で買い出しなど無茶があるのではなかろうか。とはいえここまで気合を入れて来てくれた鯉登を帰すわけにもいかない。私が店に向けて歩き出すと、鯉登はロボットのような歩き方でついてきた。