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「好きです」

 私は目の前の影山君を見て、呆然と口を開いた。

「えーと……」
「受験が終わったので告白しに来ました」

 その言葉で思い出した。影山君が前回私に告白してきた時、私は「今は受験に集中したいから」と断ったのだ。勿論その意味もあったが、受験が終われば即オーケーというわけではない。あまり異性として見られない後輩を断るための方便として、私はその言葉を使ったのだ。というか、普通受験生にそう言われたら望みはないのだと察するのではないだろうか。相手のスケジュールをチェックして、終わったころにもう一度告白しようなどという人はいないのだ。目の前の影山君を除いて。私が黙っているのを何と勘違いしたのか、影山君はもう一度告白しようとした。

「好きです」
「それはもう、わかったから」

 私は影山君に両手を差し出す。前回告白された時は、好きという気持ちを勘違いしているのではないかと思っていた。だが少なからず、影山君は半年以上も想い続けるほど本気なのだ。やり口は乱暴すぎると思うのに、不思議と巻かれてしまう私がいた。

「友達からで、いいかな」

 私が答えると、影山君は「はい!」と言って拳を握った。地元の大学にしてよかった、と私は心の中で安堵した。