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 海賊と女は切り離せない存在である。トラファルガー・ローともあろう者が女を連れていれば、それはお前のものなのかと聞かれる。部下なのだからローのものであることに変わりないのだが、相手が意図するような関係ではない。正確にはローが片思いをしている、それだけの関係だ。しかし名前の前でそれを正直に言うのはローのプライドが許さず、ローは適当に吐き捨てるのだった。

「こいつとおれの関係性は父親と娘みたいなもんだ」

 歩き出したローの後ろを、名前が追いかける。名前としては「ただのクルー」と言われると思っていたのだ。父娘とはあまり似つかないように思うし、そもそも死の外科医と呼ばれるローが本物の親子を知っているのかも怪しい。何か別の意図があるのではないか、と思った名前は、「父親」「娘」の意味を徹底的に調べた。その結果、一つの事実に辿り着いた。

「キャプテンが言ってたのってパパ活のことですよね! ご飯とか食べればいいんですね?」

 目を輝かせて言う名前に、ローは眉間に皺を寄せる。父親と娘というのはそういった意図ではないのだ。

「いや待て、お前は勘違いをしてる。飯についてはその通りだが」

 パパ活ということ自体は否定しつつも、ちゃっかり一緒にご飯を食べようとしている。ローは結構小賢しいのだ。

「他にも一緒に出かけたりしてお金貰うみたいですね。お金を貰う代わりに船での生活費を負担してもらっていたということでしょうか」

 ローの頭がくらくらとする。ローは名前の腕を買って船に乗せたのであって――途中から個人的な情で贔屓していたのは確かだが――交換条件など示した覚えはない。ローは名前の肩を掴むと、しかと言い聞かせた。

「お前はパパ活なんてしなくていい。いや飯は一緒に食ってもらうが自分を売る必要はない」
「やってること同じじゃないですか?」

 名前の純粋な瞳がローを捉える。ローは恥も忘れて叫んだ。

「パパに恋愛感情があるかどうかだ!」
「あ、今パパって認めた」

 そう言う名前は楽しそうなものである。今、ローは告白まがいのことをしたのに名前は動揺すらしない。名前にからかわれているような気分にすらなって、ローは一人「クソっ」と悪態をついた。