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「あの、佐久早そろそろ告白してほしいな……なんて」

 などと言うのは決して自意識過剰ではない。視線、仕草、言葉遣い。佐久早が私を好いているのは明らかだが、一向に告白してくる気配はなかった。好きでいるのは自由であるとはいえ、こうもあからさまにされると居心地が悪い。佐久早の気持ちは私だけでなく周囲の人間にも知られていることだろう。

 佐久早は眉を寄せると、私に詰め寄った。

「じゃあ絶対に俺をフらないな? 付き合ってもすぐに別れないな? 女同士で俺を笑わないな? 今ここで永遠を誓えるか?」

 私は後退り、降参を示すように両手を掲げた。

「ストップ、途中から結婚式になってる」

 佐久早が慎重な類の人間であるということはよくわかった。だが、ただ付き合うのに永遠を誓う必要はない。それではまるでプロポーズだ。

「別に今すぐ結婚したいとは思ってない」

 暗に真剣すぎると伝えたつもりだったのだが、佐久早は律儀に言葉を返した。その「今すぐ」という言葉に引っかかってしまう。

「いつかはする気あるんだ」

 興味本位に呟くと、これがまた佐久早を刺激してしまったようだった。

「じゃあお前はしないのか? 別れる前提で付き合うのか?」

 佐久早の瞳は私を責めるかのようだ。私は佐久早に押されながら口を開く。佐久早を重いと思っていたけれど、彼の言うことは筋が通っている。

「それは……別れないつもりだけど」

 私が答えると、佐久早は腑に落ちた顔で腕を組んだ。

「なら俺と付き合ってもいい」

 そのあまりの堂々とした態度に、私はどちらが告白しているのかわからなくなった。一応今は、佐久早の片思いであるはずなのだ。だが佐久早と別れずに付き合っていたいと思う私もまた、佐久早を好きなのかもしれなかった。