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「あ、佐久早これ。この間公欠してた分のノート」
佐久早は拍子抜けした気分で数冊のノートを見る。バレー部は大会で学校を休むことが多い。その分ノートを写させてくれるのは有り難いのだが、この苗字名前が佐久早を呼び出すからには何かそれ相応のことがあるかと思ったのだ。
「サンキュ」
受け取りつつも、落ち着かない様子の佐久早を感じ取ったらしい。「どうしたの?」覗き込んだ苗字に、佐久早は恥じらいもなく話し始める。
「誕生日に呼び出されたら告白かと思うだろ。記念日と俺の誕生日合わせようとしてんのかって」
付き合った記念日と誕生日を合わせるなど乙女趣味だと言われてしまうだろうか。だが、現実に相手の誕生日に合わせて告白するカップルはいる。苗字などまさにそのタイプだと思ったのだ。
「え! 佐久早誕生日だったの!?」
苗字はと言えば、目を丸くして驚いていた。その姿に普段の佐久早を好きな姿勢はどこに行ったのだと責めたくなる。
「俺のこと好きなくせに何で知らねぇんだよ」
通常、好かれている立場の人はこのようなことを言わないのかもしれない。だが苗字は長く佐久早を好きでいるし、佐久早が苗字の想いに気付いても、軽くいなしても好きでいた。もはや苗字が佐久早を好きだということは二人にとってデリケートな話題ではないのだ。
「どうしよう、何も準備してない……」
困り果てる苗字に、佐久早は期待する目をやる。
「物じゃなくてもあげられるものがあんだろ」
そう、佐久早を好いている苗字にしかできないことが。何を受け取ったのか、苗字は恥ずかしそうに自分の体を抱きしめた。
「じゃ、じゃあ私の初めてを……」
佐久早は思わず苛立つ。これでは佐久早がセクハラをしたようではないか。
「付き合えって言ってんだよ」
目の前の苗字が赤くなったり飛び上がったりしてる。話の流れで告白になってしまったがまあいい。肉体関係を強要したと思われるよりは、まだましだろう。
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