▼ ▲ ▼
三月の終わりになって、佐久早が誕生日であることを知った。これは私のリサーチが甘かったせいではなく、佐久早が消極的すぎたせいだろう。佐久早の机に赴き、両肩を抱き締める。
「プレゼントは私」
佐久早は私を一瞥した後、喜びも感動もせず言った。
「それは付き合ってる奴が言う台詞だ」
「付き合ってなくてもいいじゃん!」
むしろ、恋愛関係ではないからこそ言えるのだ。もし私と佐久早が付き合っていたら、冗談のような調子で言えないだろう。佐久早は誕生日を祝われた方だというのに、ダメ出しをするような口調で私を攻撃した。
「まずは俺と真面目に付き合おうとする姿勢を見せろよ。いつも本気なんだかわからない反応しやがって」
それは私の先程のような態度を言っているのだろうか。私は佐久早に好かれていることを知っているが、冗談混じりに佐久早を好きだと匂わせるようなことをしている。初めは佐久早のファンの真似事をしていたのだが、いつからか気持ちが乗るようになったのかもしれない。
「佐久早ってもしかして私のこと好き?」
私がからかうように話題をずらした。佐久早はそれを責めることなく、素直に視線を逸らした。
「お前が本当の気持ちを言うまで言わない」
佐久早はあくまで対等な立場でいたいのだ。先程の発言からして佐久早の気持ちはわかっているに近いのだが、佐久早は言いたくないらしい。それがまた可愛いと思うのだから、私もそろそろ本気になるべきかもしれない。
/kougk/novel/6/?index=1