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 どんな行事でも乗っかるのが華の女子高生である。そして、片思いをしているなら利用しない手はない。

「エイプリルフールだから好きだって言って!」

 四月一日の朝、開口一番に言うと佐久早は予想通り嫌そうな顔をした。しかし、その理由は思っていたものと違うようだ。

「嘘でもそんなこと言えるかよ」

 私が鬱陶しいから、ではなく、私が考えた嘘の内容に辟易としたらしい。佐久早は変なところで潔癖なきらいがある。大体それは衛生に関することなのだけど、恋愛においてもまた、佐久早の芯の強さは発揮されているようだ。

「え、私は嘘でも言われた方が嬉しいけど」

 正直に答えると、佐久早は眉を寄せる。

「俺をそんな最低な男にするな」

 その様子を見て、私は何故だか嬉しくなった。佐久早は自分の流儀を通しているだけだとわかっているのに、私が大事にされている気分になるのだ。私は笑みを顔いっぱいに広げ、佐久早ににじり寄る。

「佐久早ってそんなに私のこと大事に思ってくれてたんだ?」

 てっきり佐久早は、また呆れた顔をするかすぐさま否定すると思っていた。しかし実際はそのどちらでもなく、意味ありげに黙り込んでいる。これでは私の方が困ってしまうというものだ。いや、私は佐久早を好きなのだから嬉しいのだけど。

「ちょっと、反論してよ」

 私が言うと、佐久早は私を睨みつけた。

「今お前のことを真剣に考えてる最中だ。これ以上大事たしてほしけりゃそれ以上からかうな」

 その言葉に私は何も言えなくなる。佐久早の中で私の存在が思ったより大きいことに、驚いていた。