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「好きだ」
佐久早君に告白された時、私の中にあったのは新鮮な驚きだった。そしてそれは好意とよく似たものに思えた。私が元々佐久早君を好きだったのかはわからないが、私の好きという気持ちは今この瞬間に育ったのだ。
「わ、私も……」
自ら好きと言うことは難しくても、同調することなら簡単だ。佐久早君は場に流された私を見抜いたように目を細める。
「それは前から好きだったのか?」
佐久早君の口調はまるで責めるかのようだ。私は口が渇くのを感じながら、言葉を探す。
「今、嬉しくて」
「一回告白されたくらいで舞い上がって好きになる軽さが受け入れられない」
私は目を瞬く。先程好きだと言われた私は今、フラれているのだろうか。佐久早君の顔は告白しているようにも好きだと言われて喜んでいるようにも見えなかった。私は焦りすら感じながら、自分のことを指差す。
「私佐久早君のこと好きって言ってるんだよ?」
「だからそれがお前の難点だと言ってるんだ」
佐久早君は私を好きでも浮かれているわけではないようだ。確かに、佐久早君が盲目になるところは想像できない。好きな人の中にも、受け入れられない所の一つや二つあるのだろう。だからと言って、それを告白する際に本人に告げるかは別の話だが。
「佐久早君私に告白しにきたんだよね?」
確かめるように言うと、佐久早君は堂々と私を見下ろした。
「ああ。お前が好きだからこそ、俺好みにならないお前に苛ついてる」
普通は憚られるだろう言葉を、佐久早君は簡単に吐く。その様子を見ながら、私はとんでもない人に好かれたのではないだろうかと思った。
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