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「嫌いなら嫌いって言えよ」
突然呼び出されたかと思えば、不機嫌そうに言い放った佐久早に私は目を丸くした。
「嫌いじゃないよ? 何で?」
「お前最近全然俺に媚びねえだろ」
そこで漸く佐久早の言いたいことを理解する。私は佐久早が好きである。そして、その気持ちを周りにも佐久早本人にも隠さないタイプだ。下心丸出しのアタックは、佐久早にとって鬱陶しかったことだろう。そう思って大人しくしていたらこの有様だ。私達はコミュニケーションが得意ではないらしい。
「佐久早の中には好きか嫌いかしかないの?」
好きでなくなったわけではないのだが、仮にそうだとしても嫌いとは限らない。佐久早は悔しさを我慢するように拳を握った。私は何故佐久早がそこまで感情的になるのかわからなかった。
「『普通』があったとしてもお前は好きでいろよ」
体育館裏に爽やかな風が吹く。佐久早はいつもこのような風を浴びているのだろうか。自分に都合のいい展開に、頭の中で現実逃避をしてしまう。
「好きでいても佐久早に迷惑かと思ったんだもん」
「俺の気持ちを勝手に決めつけるな」
佐久早は、構われても面倒そうにしていたくせに、その実私を必要としていたのだ。今となっては、その矛盾すらも愛しい。
「じゃあ佐久早は私が好きなの?」
私が覗き込むと、佐久早は「俺の気持ちを勝手に決めつけるな」と言って視線を逸らした。もうそれが答えに近いのだが、私は細かく言及しないでおく。佐久早が私に詰められて答えに窮しているなど、嘘のようだ。
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