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※2022.4.25発売wj微ネタバレ

 似ている二人が集まれば口論が始まってしまうのは世の常である。二人とも似たような人相の悪い顔――それでいて整っている顔をして、相手を睨んでみせた。

「宮君のファンってさあ、凄い顔ファンっぽいよね。顔しか見てなさそう」

 先に吹っかけたのは及川だ。いや睨んだのは侑だからお互いさまというところだろうか。及川の視界には、侑の名前を書いたうちわを持っている女子が大量に並んでいる。侑は怯むことなく畳みかけた。

「及川サンのファンこそ顔しかいないんちゃいますか? 顔くらいしかいいとこないですやん」

 一応先輩ではあるのだが、実力主義の社会において年は関係ない。昔から先輩に疎まれるのには慣れているのだ。侑は強気だった。

「いや俺顔ファンとかいないよ。向こうでもモテたことないし」
「俺かて全然モテへんですよ。彼女とか向こう三年いませんもん」

 いつのまにか二人の争点は「どれだけモテないか」になっており、負けん気の強さから話が盛られまくっている。及川がモテていたかはともかく、侑に特定の女がいたかはブラックジャッカルのメンバーが知るところだ。恋仲ではなく、肉体関係だけだったのかもしれないけれど。

「へーじゃあさっき君に会ってた子誰? 随分可愛い子だったね」

 極め付けとばかりに試合前のことを持ち出した及川に、侑は動揺した。そしてその動揺を隠すように早口でまくしたてた。

「及川サンあいつに色目使うてます!? ていうかアレが可愛いって目大丈夫ですか」

 侑はとにかく彼女――とはまだ言っていないが、及川に見付けられたお気に入りの存在を下げようとしたのだ。及川は侑の背後を指差してみせた。

「え? さっきからこっちガン見してる子でしょ? 凄く可愛いと思うよ、宮君に怒ってるみたいで」
「ほんまや〜そういえば岩泉さんもさっきからこっち見てますね。後輩に絡むなってこととちゃいます?」

 二人は暫しの間黙り込む。侑の背後には負のオーラを発する名前が、及川の背後には一発入れようとする岩泉の姿がありありと想像できる。

 同時に顔を上げると、それまでは何だったのかというほどの歯切れの良さで口にした。

「じゃ」

 怒られるタイミングも同じ。二人はあくまで似た者同士なのである。