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好きだが付き合いたいわけてはない。オタクの難しいこの感情を、佐久早君は理解できないようだった。
「俺のことが好きなのに俺と付き合いたくないってなんだよ」
そう言う佐久早君は怒ったような顔をしている。一方的にフラれているようになったことに憤慨しているのだろうか。だがあくまでこれは私の片思いなのである。
「佐久早君は推しだから! 尊すぎるの! 私には不釣り合い」
佐久早君のことは勿論恋愛として好きだが、隣に私がいるのは解釈違いなのである。私を選ぶ佐久早君というのがもう想像できない。少しの悲しさはあるものの、佐久早君は美女と付き合ってほしいところだ。
私の気持ちも知らず、佐久早君は平然と言ってのける。
「俺はお前と付き合いたい」
それは私に好意があるという意味ではなく、私に反抗しようとしての言葉なのだろう。
「私のこと好きじゃないのに付き合いたいって何!?」
私が言うと、佐久早君はもどかしいと言うような顔をした。
「だから好きだって言ってんだろ」
「さっきの告白だったの!?」
わかりづらいにも程がある。付き合えないことへの不満は、私が好きだという意味だったのだ。佐久早君相手にそう解釈できるほど私の自己評価は高くない。話についていけない私を置いて、佐久早君はまとめにかかった。
「じゃあ両思いだな。俺のことフる気か」
「いや……私がフラれるべきと言うか……」
私が佐久早君をフるなどありえない。もごもごと言っていると、佐久早君は得意げな顔を浮かべた。
「ならフってやるから告白しろ」
「絶対付き合う気じゃん!」
今の佐久早君に告白などしたら、絶対に承諾されてしまう。そうしたら付き合うはめになってしまうのだ。何て恐ろしい男だと私は大袈裟に身を引いてみせた。
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