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「おはよう佐久早君。昨日……」
ゴールデンウィークの間日、朝の挨拶をしかけて口を閉じる。普段何度も話しかけている私がしおらしくしているのが相当おかしく映ったようで、佐久早君は「どうした」と目を向けた。私は言葉を選びつつ、佐久早君を窺うように見上げる。
「佐久早君ゴールデンウィークも部活なのに遊んでるの悪いかなって」
私が言おうとしたことは昨日友達と遊んだことなのだ。これは佐久早君への当てつけではなく、単に私が何もかもを佐久早君に報告しているだけである。しかし、部活に励んでいる佐久早君にその話をするのはいかがなものかと思った。特にゴールデンウィークでは、合宿所に泊まり込むこともあるだろう。
佐久早君はため息を吐くと、前へ向き直った。
「別に遊ぶのは好きにしろよ。ただ悪い気持ちがあるなら男とは遊ぶな」
佐久早君に私の私生活を支配する権利はない。だから遊ぶことを許可されるのもおかしな話ではあるのだが、それには触れないでおく。おかしいのは、「男と遊ぶな」と明確に宣言されていることだ。そういったことをできる関係性は、普通限られる。
「佐久早君彼氏でも何でもないよね?」
私が言うと、佐久早君は反論の言葉をなくしたように私を睨んだ。
「俺に配慮したいんだろ」
そう言う顔は、とても配慮してもらう人のそれではない。心配せずとも、佐久早君に構われている私を遊びに誘う男子などいない。とは癪だから言わずにおいた。
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