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 会話の弾みで好きだ、と言ってしまったのは数日前のことだった。佐久早は少し驚いていたが、何事もなかったかのように雑談を終わらせた。てっきり佐久早の中で私の告白はなかったことになっていると思っていた。しかし意外にも、佐久早は興味深そうな瞳を見せた。

「本当に俺のことが好きなのか?」

 その様子は告白されていろめき立つ思春期の男子のようだ。佐久早もその通りではあるのだけど、佐久早が告白にいちいち浮かれている様子はあまり想像できない。

「うん」

 私が答えると、佐久早は畳みかける。

「いつから」
「最近……かな」
「どのくらい」
「付き合いたい、とか色々思うくらい」

 まるで取り調べのような尋問をされて、私は恥ずかしかった。佐久早の意図が掴めないのだ。佐久早も私のことが好きなら質問などせずに付き合っているだろう。フる相手にわざわざ探りを入れるというのも、また考えづらい。

「ふーん」

 佐久早は新鮮な表情を見せた。私の答えが嬉しいとでも言うように。

「ていうか佐久早何回も告白されたことあるでしょ!?」

 私は気になっていたことを叫ぶ。佐久早はバレー部のエースで人気者であるはずだ。何度も女をフってきたくせに、何故私にだけ屈辱を与えるのだろう。佐久早は顔を逸らした後、言い訳のように呟いた。

「だけどお前はなんか違うだろ」

 その言葉に、少しは期待してもいいのだろうか。無自覚な佐久早のせいで、私が緊張してしまった。