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女子高生とは三度の飯より恋バナが好きなものである。昼休みの教室だというのに、話題は誰が好きかというものになった。彼氏がいない女の子達は、少し声を控えて名前を口にした。その度にテーブルが盛り上がる。一方私はと言えば、「今はいない」という一番つまらない答えを返したのだった。
予鈴が鳴った頃、佐久早は私の隣でさりげなく話しかけた。
「何で俺が好きだと言わなかった?」
この様子だと話を聞いていたのだろう。佐久早に気持ちを知られているのは今更恥ずかしがることではないが、聞かれていたのは恥ずかしい。
「は、恥ずかしくて」
私が正直に言うと、佐久早は眉を吊り上げた。
「俺を好きなのは恥ずかしいことなのか?」
佐久早は、自分が貶されたような気になったのだろうか。勿論そんなつもりはない。友達のノリに、佐久早を巻き込むのは悪いと思ったのだ。
「佐久早に迷惑がかかるんじゃないかと思って……」
「俺は別にお前に好きだと言われても迷惑じゃない」
私の言葉に佐久早はすぐさま返した。それだとまるで好きだと言わせたいようだ。佐久早が私に好意を抱いているかのような、そんな予感がしてしまう。私は佐久早を諦めるために念入りの質問をした。
「それは、他の人との恋バナでってことだよね?」
「両方だ」
佐久早にその気がないことを確かめるはずだったのに、答えはまさかの展開である。いや、まだ佐久早が私に好意があると断定するのは早いのだが、限りなくそれに近いと言っていいだろう。佐久早は困惑する私の様子を悠々と眺めている。
「告白したいんならしろ」
本鈴が鳴るまであと二分。私の人生初告白は、教室の喧騒の中で生まれるのだろうか。
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