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「……むかつく」

 ローは手配書を前に呟いた。パンクハザード、ドレスローザと暴れてきた私達には、それなりの額の懸賞金がついている。だがローが気になっているのは懸賞金の額ではないようだ。

「お前の写真は手配書で世界中の男に知られてるわけだよな。彼氏のおれも似たような顔しか見られないってのはどういうことだ」

 ローは写真の私を撫でる。どうやらローは私の顔が世界に知られたことが不服なようだった。写真と言っても、不意打ちで撮られた顔だけのものだ。ローだって世界に顔が知られているのは同じだというのに、気に入らないと言う。

「笑えばいい? ほら」

 試しに私が笑ってみせれば、ローは真剣に「可愛い」と言った。嬉しくはあるのだが、死の外科医に真顔で言われるとなんだか怖い。

「そうじゃねェ。おれにしか見せない顔を見せろって言ってんだ」

 彼氏にしか見せない顔、となれば思いつくのは一つである。

「お誘い?」

 私が聞くと、ローは腕を組んで神妙に答えた。

「最終的にはするがそれまでの間おれを好きでいてもらう」
「もう好きだよ……」

 ローは好きな人を見るような顔が見たいということなのだろうが、私の好きは既に始まっているのだ。ローと付き合った時から、絶え間なく好きである。今更言われるまでもないのだ。私が答えると、ローは「そうかよ」と言って帽子を被り直した。わかりやすい照れ隠しだ。私は小さく笑った。この顔こそが、ローにしか見えない顔かもしれない。