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「お前が望むなら付き合うが」

 一晩の過ちの後、二宮は腕を組んで言い放った。二宮が皺一つなく服を着ているのに対し、こちらは下着姿である。ひとまずブラウスだけ着ることにして、頭を整理する。

「なんかそれずるくない? 私には好きとか付き合いたいとか言わせるくせに、自分は言わないんじゃん」

 二宮は自分の気持ちを口にしないのである。あくまで私がしたいなら流される、といった口調だ。それが酷く鼻につく。

「俺が好きなのか?」
「話逸らさないでよ!」

 私は二宮に吠える。図星なのかということはどうでもいい。今大事なのは私の気持ちより二宮の気持ちだ。

「……別に付き合ってもいいと思うくらいには好いているということだ」

 私の視線を受け、二宮は重い口を開いた。少なからず、二宮は私を好きであるらしい。しかし二宮の基準はよくわからない。

「ちなみに今までそのレベルに達した女子って何人いる?」

 少し踏み込んだ質問をすると、二宮は顔色も変えずに「お前だけだ」と返した。

「元カノ全員どうでもいい女なのに付き合ってたの!?」
「童貞よりはいいだろうが」

 二宮は変わった男だと思っていたが、想像以上だ。恋愛方面に関心がなさそうとはいえ、誰が好きではない女と付き合っていると予想しただろうか。昨晩のことを思い出せば、「童貞よりはいい」との言葉も納得できる。などと考えている自分が恥ずかしい。

「とにかく、そういうことだ」

 二宮はまとめにかかったらしかった。結局二宮からは何の告白も受けていない。それでいて、私と付き合えるなら付き合おうという魂胆だ。

「何も言わない気!?」
 私が睨むと、二宮は目を細めて言った。
「どうせ好きなんだろう」

 その言葉に何も言えずに黙り込む。やはり私は、二宮に勝てないのかもしれない。