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「それで、北はテストどうやった?」
私としてはたわいもない雑談のつもりだった。中間テストを終えた初夏、テスト結果を話題に出すのは珍しいことではない。受験組の北なら尚更勉強の結果は気になることだろう。しかし北は私の話に乗ることなく、おかしそうに笑っている。いや、笑いを堪えていると言うべきだろうか。一体私の発言のどこにおかしい要素があったのかわからない。
「言いたいんやろ。言ってもええで」
北は愉しそうに目を細めた。少し考えて、北が言っているのは私の好意だということに気付く。先程の会話から――あるいは視線や仕草から――私の好意はだだ漏れだったのだ。
「え!? でも受験勉強が……」
私には言えない理由があった。北は受験組で勉強を頑張っているのを知っている。恋愛ごときで北を揺さぶりたくないのだ。
「昔から好きなの知っとるやん。今更動揺なんかせん」
北は堂々と言ってのけるが、その内容は衝撃的なものである。
「昔から知ってたん!?」
薄々バレているのではないかと勘付いてはいたが、それは最近のことだろうと思っていた。どうやら私の片思いは最初から知られていたらしい。
「ええから」
北に急かされ、私は渋々口を開く。
「……好き」
言ったところで、受験に集中したい北と付き合えるわけないのだ。そもそも、私をどう思っているかすらもわからない。完全に言わされ損だ。そっぽを向いた時、私の顔を追いかけるようにして北が唇を重ねた。
「返事は受験終わってからな」
そう言って去ってしまう北を私は呆然と眺める。もう、返事を言ったようなものではないか。甘い痺れに打たれて、私は歩くことを忘れたように突っ立っていた。
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