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 友人達と学食の席に着いたところ、隣に佐久早達が並び、向かいに別のクラスの古森達が並んだ。佐久早と古森は言わずと知れたバレー部の名コンビであるし、私達は去年同じクラスや委員会であったりする。自然と大人数で食事をとる流れになり、話は先程まで呼び出されていたという古森にシフトした。

「古森はモテるよね」

 私の友達がしみじみと言う。古森は「それほどでも?」とおどけているが、誰にでも親しみやすいキャラクターが人気を博しているのは事実だった。誰もが古森をおだてる中、一人眉間に皺を寄せる人物がいた。

「お前は俺が好きだよな」

 佐久早の発した言葉に、一同の動きが止まる。佐久早は古森に対抗するつもりで言ったのだろうが、一応私の片思いは本気である。対抗馬として消費されていいものではないのだ。

「嘘! 今言う!? よりによってみんなの前でバラす!?」

 私は恥を忍んで叫んだ。みんなは黙り込んでいる。私の佐久早への思いは知られたものかもしれないが、それでも気付かないふりをしていてくれたのだ。

「責任をとるから大丈夫だ」
「どうやって!?」

 もはや言葉を交わしているのは佐久早と私しかいない。男子の一人が気まずそうに麺をすする音がズズ、と響く。その中で佐久早は堂々と言い放った。

「付き合う」

 あまりの佐久早節に私はめまいすらしてくる。流石に見ていられないと思ったのか、古森が口を挟んだ。

「佐久早、モテるマウントとるなら大事な子を一人挙げるより好きでいてくれる子を何人も挙げた方がいいと思うぜ?」

 そう、佐久早はモテると言われた古森に対抗したかっただけのはずである。それが何故か、私と付き合う話になっているのだ。マウントをとるなら自分を好きでいてくれる女子を何人も挙げた方がいいはずだ。佐久早に注目が集まる。

「大事とかじゃない。こいつが勝手に好いてくるだけだ」
「じゃあ付き合わねぇの?」
「付き合う」

 私は完全に置き去りになり、古森との会話だけで付き合うことが決まっている。佐久早は、交際に双方の同意が必要だと知っているのだろうか。同意を取られたところで、頷くしかない私にそれを言う権利はないのかもしれないけれど。早くも先が思いやられる。私は佐久早と順調に、付き合っていけるのだろうか。